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「非効率」な現場主義で飽きやすい世界の消費者を喜ばせる

「ライフスタイル・グローバル企業」への転換を目指し、2025年に現状の売上の約5倍を創出するというトリドール。その足がかりとして、すでに多数のM&Aを行い、外食を中心に様々な事業展開を行っている。 今後、LVHM、P&G、IKEA、スタバなどと肩を並べるグローバルブランド企業を目指すにあたって、どのような戦略をとるべきか。「グローバル×ライフスタイル領域」でのトリドールの戦い方について、アナリストの山手剛人氏とトリドール経営企画室長小林寛之氏が語る。

外食はグローバリゼーションの最前線
──トリドールのグローバルでの事業展開について、山手さんはどのように見ていますか。
山手:ルイ・ヴィトンのような製造業だと、グローバルにポジションを築き上げるには時間がかかります。
一方、マクドナルド、ケンタッキー、スターバックスなどは、近代的なチェーンオペレーション型の外食企業として、より短期間で成功を収めることができた。ですから、外食で世界に打って出ているトリドールは、そもそも筋がいいですね。
小林:ありがとうございます。
山手:それに、一口に「グローバル」と言っても、データで見れば大してグローバル化が進んでいない企業も多いんです。
たとえば、ウォルマートは北米での売上がほとんどで、イケアも欧州が7割ほどにすぎません。一方、マクドナルドやスターバックスは北米の店舗数は全体の3~4割ほど。外食産業は、実はグローバリゼーションの最前線なんです。
その要因のひとつは、海外の人が「たまには日本食を食べよう」と丸亀製麺に足を運ぶように、外食が「ハレの日」にも利用されるから。当然、ローカライズも必要ですが。
小林:ローカライズには丸亀製麺も力を入れています。伝統的なうどんを食べていただきたい気持ちはありますが、それが押し付けになってはいけない。一番大事なのは、現地の方においしく食べていただくことです。
山手:そうですよね。本当に日本食らしい日本食の体験がしたい人には、「日本に来てください」でいい。
小林:とはいえ、海外の店舗でも、毎日製麺機で麺を作り、できたてのうどんを提供するという基本は変わりません。
社長の粟田が香川で感動した製麺所の風情、つまりは湯気、熱気、大行列のにぎわい。そういった製麺所のシーンをそのまま閉じ込めたのが丸亀製麺ですから。
外食チェーンでは異質な「マルチポートフォリオ」
──他のグローバル外食企業とトリドールの戦略を比べて、特徴的な部分を教えてください。
山手:いい意味で異質な点はいくつもあります。たとえば、マクドナルドはご当地メニューもあるけど、あくまで単一業態。しかし、トリドールは各地域で、複数の業態を組み合わせようとしています。
小林:地域の食文化に対応したマルチポートフォリオ戦略ですね。もともとヌードル文化があり、うどんとの相性もいいアジアでは、丸亀製麺の展開と並行して、ニーズやターゲットに応じたブランドをM&Aで取り込んでいます。
他方、欧米のように食文化が異なる地域では、地域に根ざしたブランドをグループ化して展開することに主眼を置いています。
山手:東南アジアは今後、人口分布を見ても確実に伸びる市場ですから、そこに早くから飛び込んでいるのもポイントです。アジアと日本でも、やはり丸亀製麺の客層は違いますか。
小林:違いますね。日本ではランチとして、10~15分でさっと食べる人が主流です。海外でもクイックサービス需要はありますが、もう少しゆっくり滞在される方も多い。ですから、客席も長時間利用向きのテーブル席やベンチシートを多めに配置しています。
現地の方にとって、うどんはあくまで異国の料理。日常から外れた存在です。しかし、弊社のターゲットは、客単価が低くとも、来店頻度が高い市場。そこを狙おうにも、丸亀製麺のローカライズだけでは越えられない壁があります。
山手:現地のものとして受け入れられるようなメニューを自前で開発できれば一番いいのですが、「外国人」である日本人がどれだけ知恵を絞っても、「イタリア人が握る寿司」のような違和感は残るでしょうね(苦笑)。
小林:現地のチェーンを内部に取り込むメリットはそこですね。
山手:顧客体験を重視するチェーンを積極的なM&Aで取り込んでいるのもトリドールの大きな特徴です。
欧州を中心とした16カ国84店舗を展開する「WOK TO WALK」バルセロナ店の様子。タイの屋台料理をコンセプトとしながらも、欧米のトレンドを取り入れて現代風にアレンジしたアジアン・ファストフードチェーンで、特に若者に支持されている
「ボートヌードル」は、回転ずしの要領で小さなサイズのヌードルを自分が食べたい分だけ注文し、食べ終わった器を積み上げながら食べ進めるスタイル。その手軽さと美味しさ、視覚的な楽しさが東南アジアを中心に人気
従来の外食チェーンが重きを置いてきたのは、体験ではなくコンテンツです。マクドナルドでいえば、ハンバーガー。強力なコンテンツを用意すれば、あとは消費者が勝手に伝播させてくれた。
だから、本国以外の地域ではフランチャイズ展開し、外部の資本や経営リソースをうまく「つまみ食い」することができた。
小林:私たちは体験を売っている企業です。だからこそ、丸投げはできないという自負はありますね。
加速する消費者の変化にどうやって食らいつくか
──コンテンツの賞味期限が短くなったと言われる今、「体験を売る」トリドールのどのような部分が強みになるのでしょうか。
山手:昔はファッションにしても、雑誌を読んで、「今年はこれが流行するのか」と勉強する感じでしたよね。外食業界でも、一方向的なマーケティングや情報発信と、それをもとにしたビジネスが通用しなくなるのは間違いない。
小林:おっしゃる通り、以前であれば、情報を発信できる人は限られていて、大多数はフォロワーでした。今では多くの個人がSNSなどで情報発信するようになり、それが相互に干渉して、消費者の嗜好の変化のスピードが累乗的に増しています。
山手:だから、消費者のニーズを吸い上げることが得意なファストファッションなどが伸びている。今、街で流行しているものをキャッチして、即座に商品に反映させる。スピード勝負の世界です。
SPA(製造小売業)と呼ばれる、ZARAやユニクロなどの企業は、バリューチェーンを短くして、変化するマーケットに可能な限り早く対応しています。
小林:私たちも戦略の方向性はSPAと同じです。
丸亀製麺にはセントラルキッチンがありません。これまでは、それが非常識だと散々言われてきましたが、製造から販売まですべてが店舗で完結するおかげで、実際の声を聞き、反応を確かめながら、どんどん変えることができる。
山手:セントラルキッチンだと、商品ひとつ変えるにしても、ラインを再設計したり、新しい機械を入れたりする必要がありますからね。
小林:消費者のニーズが多様化して、何が当たるかわからなくなった現在、このフレキシビリティは大きな武器です。必要なら、翌日からでも変えられる。
弊社では、リサーチに時間をかけていると、「どうして早く店舗を出さないの?」と言われるんですよ。それが海外でも、もちろんコンプライアンスや衛生などは確認した上でとりあえず1店舗出して、走りながら調整するのがトリドール式です。
「グローカリゼーション」戦略で世界を制する
──トリドールの戦略について話してきましたが、グローバルで「勝つ」ために何が必要か、お二人の考えを聞かせてください。
山手:グローバルに展開する企業には、大きく2つのタイプがあります。一つは集積によるメリットを追求していく企業。世界共通の最適解をためていく、あるいは集中的にものを研究開発するといったタイプですね。
もう一つが分散型。トリドールのように地域ごとに最適化していくタイプです。
分散型はノウハウの共通化が難しい。そのぶん、人材も必要だし、手間がかかります。だから集積のメリット、つまり効率を追っている会社のほうが圧倒的に多い。イケアもユニクロも集積型です。
小林:ノウハウをいかに共通化するかという解は、トリドールもまだ持っていません。むしろ今は、顧客体験を一番に置くとか、クイックにPDCAを回すという経営のスタイルを共有しようとしています。
それなら地域や文化が違っても共有可能だし、そこを出発点に経営方針、ミッションにつなげていけるのではないでしょうか。
山手:人、研究所、工場といった物質的なものを集約・共通化するか、理念とか、共通理解・集合知といった物質化できないものを共有するか。これはかなり奥深い話です。
効率を追求しようとすると、過去の成功例に縛られたり、セクショナリズムに陥って、ガラパゴス化や大企業病を招いたりもする。
分散型は、一見コストがかかるけど、フットワークは軽いし、新しい発想や、新しいユーザー体験を探っていくダイナミズムが失われずにすむ可能性が高い。
たとえば、ネスレは組織の運営ノウハウやマーケティング手法は共通化しながら、各地域でブランドを立ち上げるのが得意です。
小林:物質的なもので押そうとすると、アマゾンのように、10年赤字でもいいからとにかくつぎ込み続ける。そうでないと勝てない世界になっているように感じます。
山手:たしかにそうかもしれません。トリドールの強みは一言で言うと、徹底した現場主義にある。特に食やライフスタイルといった分野では、グローバルな価値観はコモディティ化しつつある。今後は、よりローカルに根ざしたものが重視されるはずです。
小林:体験を重視し、消費者を喜ばせることで需要を創造すること、そして、付加価値を失わずにコストを最適化させること。これまで丸亀製麺が国内でやってきたことを、ほかの国・地域でも展開していけば、それができるはずです。
山手:ローカル市場におけるイノベーターを束ねて、グローバルでのシェアを取るという、「グローカリゼーション」戦略ですね。
ひとつ気がかりなのは、トリドールが得意とするもの、たとえばライブ感が顧客にウケなくなったケースです。今、多くの大企業が、消費者の思いもよらない変化に対応しきれずに、規模を縮小させています。
成功体験に縛られず、素直に目の前の顧客の変化を感じ取り続けることができるかが今後のトリドールの成長を左右しそうですね。
小林:おっしゃる通りです。企業は人の集合体にすぎず、突き詰めれば、人がどう働くかがすべて。常に新しい風を取り込みつつ、元からいた人たちとうまく交ぜ合わせて、常にイノベーションを生み出せる組織を作りたいですね。
(編集:大高志帆 構成:唐仁原俊博 撮影:露木聡子)

■本記事はNewsPicks Brand Designの制作のもと、2018年1月22日にNewsPicks上に掲載されたものです。

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